初恋相手に再会したら、恋の続きになりまして
滉星は理世に触れたかった。
けれど、指先を触れさせたら、彼女が壊れてしまいそうで怖かった。
高校の頃の淡い思い出――あの小さな公園での一瞬のキス――を思い出すたびに、理世の繊細さと可愛らしさが胸に突き刺さる。

――優しく触れられるだろうか。

心の奥の衝動と理性の声が、激しく交錯する。
「ここは……自分の仕事場だ」
滉星は自分に言い聞かせる。


それでも、ふいに、理性は崩れた。



理世が、何気なく滉星に近づいてきたのだ。
小さな動作。ほんの少しの距離の縮まり。
その自然さに、滉星は胸を撃たれた。

――かわいい……

思わず心の奥で呟く。
大人になった今の理世の柔らかさ、温かさ。
目が合えば、どきどきして、唇の端が微かに震える。

滉星の理性は、もう限界だった。
小さな誓いも、仕事場という名目も、彼の胸の鼓動には太刀打ちできない。

理世の身体が、自分の方にほんの少し傾いた瞬間――
滉星は、理性を手放した。

「……っ」

言葉にならない声を漏らしながら、そっと理世を抱き締めた。
柔らかくて温かい体。髪の香り。鼓動の速さ。
すべてが、滉星の胸に焼き付く。

理世は驚いたように小さく息を漏らす。
けれど、抵抗するでもなく、自然に滉星の胸に身を預けた。
「……滉星……」
囁く声も、少し震えている。

二人の間に流れる時間が、いつもよりゆっくりと感じられた。
静かな事務所の中で、心臓の音だけが二人を包む。
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