桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
第1章 桃と武人
それは私にとって、人生を大きく変える日だった。
三年に一度の妃募集の日。
傾きかけた実家の簪屋を救うために、私は思い切って応募した。
父が丹精を込めて仕上げた簪を胸に抱きしめ、ただ無我夢中で宮廷へ向かったのを覚えている。
まだ若い皇太子様のために行われる初めての募集。
――けれど実際、私はそのお姿を一度も見たことがなかった。
どんな御方なのかも知らず、憧れや恋心など抱けるはずもない。
ただ、選ばれれば家が救われる、それだけを願っていた。
「柳小桃。そなたを皇太子の後宮に迎える。」
名前を呼ばれた瞬間、胸がどくんと鳴り、膝が震えた。
選ばれたのだ。本当に私が。
けれどその喜びはすぐに不安へと変わっていく。
与えられたのは最下位の身分、才人。
華やかに着飾った娘たちに囲まれ、私は自分が小さく見えて仕方なかった。
皇太子様に目を留められることなど決してない。
三年に一度の妃募集の日。
傾きかけた実家の簪屋を救うために、私は思い切って応募した。
父が丹精を込めて仕上げた簪を胸に抱きしめ、ただ無我夢中で宮廷へ向かったのを覚えている。
まだ若い皇太子様のために行われる初めての募集。
――けれど実際、私はそのお姿を一度も見たことがなかった。
どんな御方なのかも知らず、憧れや恋心など抱けるはずもない。
ただ、選ばれれば家が救われる、それだけを願っていた。
「柳小桃。そなたを皇太子の後宮に迎える。」
名前を呼ばれた瞬間、胸がどくんと鳴り、膝が震えた。
選ばれたのだ。本当に私が。
けれどその喜びはすぐに不安へと変わっていく。
与えられたのは最下位の身分、才人。
華やかに着飾った娘たちに囲まれ、私は自分が小さく見えて仕方なかった。
皇太子様に目を留められることなど決してない。
< 1 / 148 >