桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
「名前は?」

不意にそう聞かれ、私は思わず答えてしまった。

「……小桃です。」

「小桃? あはは! 桃なの⁉」

武人は声を上げて笑った。

からかっているのではなく、心の底から楽しそうに。

頬が熱くなる。

けれど、不思議と嫌な気持ちはしなかった。

「あなたは?」

「俺? 俺の名前か。改めて聞かれるとは思わなかったな。」

「はあ?」

何を言っているの、この人。有名人なの? 

それともただの変わり者?

武人はにっと笑い、「煌明。煌って呼んでよ」と軽く名乗った。

「……煌さん。」

口に出してみると、なんだか胸の奥が温かくなった。

まるで友人がひとり増えたような、そんな不思議な心地。

「小桃はここにいるってことは……皇太子の妃なの?」

その問いに、胸がぎゅっと縮む。

妃と呼ばれても、才人は最下位。

皇太子様の顔すら遠目にしか見たことがない。

どう答えればいいのだろう――私は視線を落とした。
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