桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
「じゃあ、また来るよ。」

煌が軽く手を振って言った瞬間、私は思わず声を上げていた。

「えっ? また来るって……! ここは男性禁止なのよ⁉」

後宮は女人の園。

男が足を踏み入れるなんて、ありえないはずだ。

もし誰かに見つかったら大変なことになる。

――そう思うと心臓が跳ねた。

けれど煌は少しも動じず、むしろ楽しそうに口角を上げて言い放つ。

「気にするな。俺の庭だ。」

「……え?」

あまりに堂々とした物言いに、私は口をぱくぱくさせるしかなかった。

怒る気も、咎める気も、すっかり失せてしまって、ただ呆然と彼を見送る。

(この人……いったい何者なの?)

不思議な余韻だけを残して去っていく背中を、私はぽかんと見つめ続けていた。

そして胸の奥で、次にまた会えるかもしれないという期待が、そっと芽を出していた。
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