桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
「ところで、才女って……何をすればいいんですか。」

不安を隠しきれず、私は案内役の宦官に尋ねてみた。

「後宮に入ったからには、お役目はただ一つ。皇太子様のお相手をすることです。」

あまりに簡潔な答えに、胸がしんと冷えた。

「……えっと、それは……夜の閨のことですか。」

恐る恐る言葉を重ねると、宦官は眉ひとつ動かさずに頷いた。

「そうです。他にありますか?」

無情な響きに、私は息を呑んだ。

ただ皇太子の寵愛を受けるか受けないか、それだけが私の価値を決めるのだと突きつけられた気がした。

「……そう、ですか。」

宦官が去った後、私は小さな部屋の真ん中に座り込んだ。

日中は何をしていればいいのだろう。

かんざしを手に取っても、皇太子に差し出す日が来るのかどうかさえ分からない。

それからの日々、私はぼんやりと庭を眺め、時折、紙片に簪の図案を描くくらいしかすることがなかった。

後宮の静けさは、思い描いていた華やかさとはまるで違う。

孤独だけが、私を包んでいた。
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