桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
けれど才女という身分の女が、そう簡単に皇太子様に会えるとは限らなかった。
もっと身分の高い妃たちは庭園に呼ばれたり、お茶会に招かれたりして、皇太子様と談笑する機会があるのだという。
けれど私たち才女には、そのような場は与えられない。
呼ばれもしないのに、どうやってお相手をしろというのだろう。
「あーあ。出会いがないのに、どうやって皇太子様のお相手なんてできるのかしら。」
思わず独り言が口からこぼれる。
部屋の机に置かれた父からの贈り物。
――金の細工が施された簪を見つめながら、私は小さくため息をついた。
そう言えば、私、本当はかんざし職人になりたかったんだ。
小さな頃から父の隣で見てきた、あの繊細な手仕事。
花びらのような細工や、宝玉を嵌める指先の正確さ。
自分もあんなふうに美しい簪を作りたいと、ずっと夢見ていた。
なのに今の私は、後宮の片隅でただ「皇太子様のため」と呼ばれ、何もできずに座っている。
かんざしを作る手も、夢を語る声も、誰にも届かない。
私はかんざしをそっと掌に乗せ、胸の奥がちくりと痛むのを感じた。
もっと身分の高い妃たちは庭園に呼ばれたり、お茶会に招かれたりして、皇太子様と談笑する機会があるのだという。
けれど私たち才女には、そのような場は与えられない。
呼ばれもしないのに、どうやってお相手をしろというのだろう。
「あーあ。出会いがないのに、どうやって皇太子様のお相手なんてできるのかしら。」
思わず独り言が口からこぼれる。
部屋の机に置かれた父からの贈り物。
――金の細工が施された簪を見つめながら、私は小さくため息をついた。
そう言えば、私、本当はかんざし職人になりたかったんだ。
小さな頃から父の隣で見てきた、あの繊細な手仕事。
花びらのような細工や、宝玉を嵌める指先の正確さ。
自分もあんなふうに美しい簪を作りたいと、ずっと夢見ていた。
なのに今の私は、後宮の片隅でただ「皇太子様のため」と呼ばれ、何もできずに座っている。
かんざしを作る手も、夢を語る声も、誰にも届かない。
私はかんざしをそっと掌に乗せ、胸の奥がちくりと痛むのを感じた。