桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
「俺たち、放れられないな。」

そう囁いたあと、煌は私を腕枕にして、穏やかな寝息を立てた。

その温もりを感じながら、胸が熱くなる。

(こうして私の元へ通ってくれる……それだけで幸せなのに。)

けれど、それは一度きりのことではなかった。

煌は他の妃を夜伽に選んでも、結局は杯を交わして世間話をするだけ。

誰の寝台にも上がらず、最後には必ず私の部屋へやって来ては、寄り添うように眠る。

その繰り返しが、まるで習わしのようになっていった。

「小桃……やっぱり、君でなければ駄目なんだ。」

そう呟いて眠る煌の顔を見つめる度に、胸の奥が甘く震える。

だが、後宮に秘密は長く留まらない。

――皇太子は誰も抱かない。抱くのは柳妃ただ一人。

その噂は瞬く間に広がり、侍女たちの間から宦官の耳へ、さらに妃たちの間へと伝わっていった。

幸せであればあるほど、不安の影は濃くなる。

(これでは……ますます、妃たちの怒りを買ってしまう。)

甘美な夢のような夜の裏で、次の嵐が迫っているのを感じずにはいられなかった。
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