桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
夜更け。

「どうして……」

戸を開けると、煌が立っていた。

「来ずにはいられなかった。」

疲れたように部屋へ入り込み、そのまま私の寝台に身を投げ出す。

「安妃はどうしたのですか?」

恐る恐る問うと、煌は薄く笑った。

「うん……結局、酒を飲ませて先に寝かせた。」

私は隣に腰を下ろし、そのまま横になる。

「……抱かなかったのですか。」

煌の手が私の頬に触れ、優しく撫でる。

「まあ、彼女だって最初の夜から抱かれるとは思っていないだろう。」

胸の奥がじんわり温かくなり、思わず彼の胸に顔を埋めた。

「でも……それなら、どうしてわざわざ来て下さったのですか。」

「決まっている。」

煌の声は低く、真っ直ぐだった。

「小桃の傍で眠りたかったからだ。」

その囁きに、胸が熱く締め付けられる。

(この人は……どこまでも私だけを選んでしまうのだ。)

私は震える声で答えた。

「……私も、煌と一緒にいたい。」
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