桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
「これでは、夜伽を当番制にした意味がないじゃない!」

安妃の叫びに、妃たちの怒声が重なる。

「私も呼ばれましたのに、結局は酒を飲んで話しただけ。」

「そうよ、殿下は枕元から抜け出して、また柳妃の部屋へ行かれるんですもの!」

憤りと嫉妬が渦巻く広間。

安妃は扇を握りしめ、怒りに燃える目で叫んだ。

「結局、抱かれるのは柳妃だけ! しかも人目を忍んで彼女の部屋で眠るなど、後宮の秩序を乱す行為そのもの!」

妃たちのざわめきに私は震え、居心地の悪さに耐えきれずその場を離れた。

(もう……私の存在が、後宮全体を敵に回している……)

「こうなったら……」

安妃の声が追いかけるように耳に残る。

「皇后様を立てて頂くしかないわ!」

その言葉に広間がどよめき、同調の声が上がった。

「そうだ、皇后がいれば秩序は保たれる!」

嵐のような怒りの声に包まれながら、私は胸を締め付けられた。

煌の溺愛が甘美であるほど、後宮の憎悪は鋭くなる。

――それを突きつけられる思いだった。
< 90 / 148 >

この作品をシェア

pagetop