桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
後宮の広間は、絢爛豪華に飾り立てられていた。

黄金の燭台に無数の灯がともされ、絹の垂れ幕が風に揺れる。

家臣、宦官、そして数多の妃たち――後宮に仕えるすべての者が集い、煌と紅蓮の婚儀を祝っていた。

「皇太子殿下、ご結婚おめでとうございます。」

「紅蓮様こそ、皇后にふさわしいお方。」

祝福の声が次々に響き渡る。

紅蓮は真紅の衣をまとい、黄金の冠を戴いていた。

その姿は気品に満ち、まばゆいほどに美しい。

「煌明様……この日を迎えられたこと、心より嬉しく存じます。」

紅蓮がにこやかに微笑むと、場は大きな拍手に包まれた。

煌は、紅蓮の手を取る。

けれどその表情は変わらず、どこか遠いものを見つめているようだった。

私は端の席で頭を垂れ、二人を見守っていた。

煌の手が紅蓮の手を握るたび、胸がぎゅっと締めつけられる。

(これは……後宮の安定のための婚姻。そう分かっていても……)

煌の隣にいるのは紅蓮――その現実が、私の心を鋭く裂いた。
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