桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
翌日も、祝宴は続いていた。

華やかな調べと香の煙が漂う中、妃たちの笑い声が背後から聞こえる。

「ねえ、皇后様に結婚のお祝い、贈った?」

「ええ、私は扇子をお納めしたわ。」

「私は髪飾りよ。」

彼女たちは互いに顔を見合わせ、くすくすと笑う。

「気に入っていただければ、きっと皇太子様からのお情けに繋がるはず。」

「そうよね。利用できるものは利用する。それが後宮で生き残る心得だわ。」

その言葉を耳にした瞬間、胸がざわついた。

煌の傍にいたいと願う気持ちさえ、計算や策略にすり替えられてしまうのだろうか。

私は手の中にある、父からもらったかんざしをそっと握りしめた。

(私は……煌を利用なんてできない。ただ、愛しているだけなのに。)

煌の一途な愛と、後宮の冷たい打算。

その差は、これからの未来を揺るがす影のように、私の胸に重くのしかかってきた。
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