桃果の契り 才人妃は皇太子に溺愛されて
「煌明……私、ずっと……あなたが好きだったの……」

皇后様の吐息が、夜の静寂を破るように響いた。

寝所の中で、彼女の体が激しく揺れる。

「紅蓮、これ以上は……」

煌の声は切なく、どこか抑え込むように響いた。

「いいの……! あなたのすべてを……私にっ!」

「あっ……」

煌の体が大きく揺れると、紅蓮様の白い腕が仰け反り、甘い声がほとばしった。

「……ああ……煌の子種……熱い……」

その言葉が、鋭く胸に突き刺さった。

手にしていた箱が、かたんと揺れる。

私は震える指で持ち直そうとしたが、どうしても握れなかった。

(もう……私だけの煌ではない……)

かんざしの箱を廊下に置いたまま、私は背を向けて走り去った。

涙で視界が滲み、足元さえおぼつかない。

煌を信じた心が、音を立てて崩れ落ちていく。
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