カッターナイフ / 一生涯抜くことの出来ないある男の話
 そして約束の15分前に大きな木に到着した。

さすがに時間は早すぎた。

少女はまだ来ていなかった。

約束まで15分ある。

それは洋平にとっては長すぎるとも言える時間に感じた。

いろいろと聞きたいことや話したいこと、を頭で整理しようとすると余計に混乱してしまった。

でも5分ほど前になって、その少女は現れた。

 洋平は一目見てわかったが、その子は少し探しているようにも見えた。

まあ夏祭りに偶然遭遇しただけ、の人間だったので自然なことであったが。

少女は以前見た服装とは異なり浴衣ではなくジーンズにダウンのジャケット、白いスニーカーを履いていた。

イメージは異なっていたが、肌の白さや整った顔立ちはそのままである。

かえってその服装の方が美少女にイメージには合っているように見えた。

洋平は大きな木に近づき、声を掛けた。

「あの。」

少女の視線は洋平に向けられた。

以前のような鋭い眼差しはそのままで、洋平の言葉はそこで止まった。

完全に呑まれていた。
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