カッターナイフ / 一生涯抜くことの出来ないある男の話
 そこにまた別の従兄の友人が来た。同じクラスではない様子だったが、仲は良い感じの話し方である。

後ろに、小柄な一人の少女、がいた。

その友人の妹らしい。

浴衣を着て、手には金魚すくいでもらったビニールの袋を提げている。

年齢的には洋平とさほど変わらないように見えた。瞬間、洋平は視線をそらした。

少女と一瞬、目が合ったからである。

日頃から消極的な性格で、人と目が合うとそらしてしまうクセはあった。

が、その時はいつも以上に威圧されているような感覚を持った。

その少女が自分に悪意を持って睨んでいる感じがしたからである。

理由はまったくわからないが、生理的に自分が嫌がられている気がする。

直感で、そんな感じがした。

しばらく従兄とその友人の何げない会話があり、友人は他に待ち合わせの別の連れのところに行くから、とのことで別れた。

別れ際にちらっとまた少女を見た時、少女はもう横を向いていて、洋平はあらためて少女を見ることが出来た。

髪は、ほんの少し茶色を帯びていたが染めている風ではなさそうで、細いうなじが見える程度のショート。

日本人的な体型ではあったが、横顔は、端正で北欧でよく見る美人特有の冷たさを感じる。

白い肌がいっそうその冷たさを強調している。

少なくともその時は、そう、見えた。

そこで、従兄とその友人とは別行動でじゃあまた、と離れていく。

しばらくして

「洋平。お前、あいつの妹見て、照れとったじゃろう。」

悪戯ぽく従兄にひやかされた。

「ちゃうよ。」

言われて、洋平はさっきの感覚が恐怖であると同時に、何か、違うもうひとつのものがあることに気づいた。

しかし、それが何かがはっきりとはわからなかった。今までにない感情だったから。
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