カッターナイフ / 一生涯抜くことの出来ないある男の話
 兎も角、洋平は変わってきた。

何事についても積極的な行動に出ることが多くなっていた。

学習成績やクラブ活動にも大きく影響は出ている。

それは、洋平が持っていた今まで自分の中にあるコンプレックスや閉塞感というものを確実に和らいでくれていた。

そして二学期が終わりそうな時期はやってきた。

季節ももうそろそろ秋から冬に近付き始めたころ、従兄がバイク事故で入院したことを両親から告げられた。

命には別条はないらしいが足に少し後遺症が残る可能性もある、という。

夏休み、自分を可愛がってくれた従兄の事を思うとやはり心配になり、その友人たちにもまた会ってみたい、という衝動に駆られたのは事実である。

しかし心の中には、あの夏祭りに出会った美少女に少しでも話が出来れば、という想いが一番強かったのかもしれない。

洋平は両親に、次の冬休みに従兄にお見舞いに行きたい、ということを自ら告げた。

両親は、洋平が自分からそのようなことを言いだすことに酷く驚いた。

冬休みであるので当然ながら正月は尾道で過ごすことになる。

最初は少し返答に困っていた様子だが、このような事態が起こったこと、従兄の心配をしていることに少し洋平の成長を感じ、感激したのかもしれない。

洋平は冬休み、尾道で過ごすことを了承してもらえた。

そして母は尾道に住む姉にその旨を伝えてくれた。

伯母も自分の息子に対して洋平が心配してくれていることに大変感謝してくれて、喜んで受け入れてもらえた。

そして冬は訪れてくる。
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