Pandora❄firstlove


ーーー俺が母親から性暴力を受けた傷を生徒に向けているーーー



言葉が詰まった。



それは紛れもない事実なのかもしれないと、直感的に感じてしまったから。



俺が、ひまわりのような愛に恋をしたのはーー母親から受けた傷を埋めるための道具としてしか、見ていなかったからかも……と。




「貴方は、教師失格だと思うわ。司先生」




貴方はーーーか。




「この秘密を知られたくなかったら、条件があるの」




「………どんなだ?」




「私と付き合って」



林檎先生は俺の頬を触れた。



それは愛しいものを支配する、どす黒い女の目。




それはかつて俺の目の前からいなくなった、母親から受け継いだ目のようだ。



「断る。誰が………誰がお前なんかと……!!」




「ならいいの?愛がどうなっても?」




薄暗いこのゲーム勝ったと言わんばかりに微笑んだ彼女。




クソ………何なんだよ!!!




「司先生……ごめん。俺、やっぱりどんな手を使っても、愛は渡せないって思ったから………」




保健室を走り去って出ていった和也。




「さぁ、私と契約して。さもないとーーー」





悪質な女を黙らせる方法を、俺は知ってるんだぞ?




何年、この手の女に騙されてきたのか………。




俺は息を吸って、目をつぶり林檎先生の唇に唇を重ね合わせた。




それは悪魔との契約を結ぶ合図。




悲劇が再開しそうな予感はしていたけれど。




神様はまだ味方していたようで。








< 26 / 30 >

この作品をシェア

pagetop