Pandora❄firstlove

初めて会った光


入学式からとある噂が耳に残り、絶えなかった。



「保健室に眠り姫がいる」



との噂が。




眠たい目をこすりながら、入学式を迎えていたら在学中の生徒達が、そう騒いでいたものだから。



なんだか呆れてしまって、帰りたい気持ちを抑えて仕事をしていたが。



その噂はこの時期の体育祭まで、打ち消されることはなかった。



司くんと校長に怒られていた直後、俺は全てがどうでもよくなり、ある程度仕事をこなし。



保健室へ逃げ帰るように出向いた。




先生だって、精神がすり減って保健室に転がり込むことがある。



俺の場合は、「やりがいない仕事したくない病」といえるのかもしれん。



相変わらず保健室の先生は忙しいのか、留守だった。



別にそれがいい。



俺だって一人になりたい気分ではあったし。




ベッドに横になりたいがために、掛けられたカーテンを開く。




そこにいたのはーーーー眠り姫。




「………変態さん?」




「なんでだ」





「なんで締めてるのに、開けるの?」




ご尤もだ。



「お前こそねてたんじゃないのか?」




「なんで切れるかなー。もう、無気力なのかわからないよね。司先生」




短髪の眠り姫は、体を起こしてぴょこんとベッドから降りた。




その瞬間、天使に翼が生えたかのような錯覚を覚えたのは、気の所為でありたい。




「どうして、俺の名前を知ってる。お前は……、確か、1年のーーー」




「愛だよ。上の名前はまだ秘密」




優しそうに笑う姿。



ひまわりのように、明るい彼女はとても華やかで美人。



学校の中で群を抜いて、数名の選ばれた地位に所属していそうなほど、光り輝いていた。




「先生ってば知らないの?自分がイケメンだってこと?女子高生達みーんな噂してるんだよ?」




「暇人なだけだろ。ここの連中は」





「そんなこと言って、実は襲うこと考えたり?」




「ガキ臭い。近寄るな。そんなのは興味ない」




「へぇー。なんだつまんないの」




「つまんないとは何だ。つまんないとは」





「ちょっとはこの閉鎖された、空間で楽しい噂聞けたらなーだなんて思ってたんだけど………無理か。仕方ない」





取り敢えずまたバタンキュー状態に戻った、愛。




まだ1年だからだろうか、あどけなさが残っているとしても何処となく、あれだーー世間知らず感が否めないが。



どうでもいいや。




「あ、じゃあさライン交換してよ!!」




ソファーに横になって、目をつぶっていたら突然として提案がなされる。



「はぁ?なんでそうなるんだ」




「だって、貴方だってその反応だったら、私の噂を聞いてるでしょ?」




「ホントなのか?あの噂は」




「ホントだって。私はこの保健室からずーっと出れないの」




その言葉を言った瞬間、ずんと暗い影をほんのり落とす愛。



ーーー俺が悪いみたいにするの、卑怯じゃない?



「そんな顔しても、駄目なもんは駄目だ」




「えー、ケチ!!」

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