Pandora❄firstlove
ドアノブを持つ手が止まった。
「友達?」
振り向く。
純粋無血な瞳をこちらに向けた愛。
「友達……一人もいないのか?」
「こんな状態で、信頼できる人いると思う?」
何だか、胸の奥に氷柱のようなものが引っかかって。
「……お前、孤独を感じたことあるか?」
「あるよ。ずーっと、私で言うところの「女の子から勘違いされている感じ」」
「それは……本位ではないんだな?」
「もちろんだよ……、私だって本当はこの体育祭のリハーサル参加したいよ。でもね駄目だっていうんだ。両親が」
「両親の事嫌いなのか?」
「もちろんだよ」
その瞬間、俺は何処かでこの光景を観たことがある気がした。
それはなんだろうと、瞬時に考えた時。
答えは見えた。
「お前は、昔の俺にそっくりだ」
「へ?」
「両親を………母親を殺してやりたいと初めて憎んだあの日の俺に」
引かれただろうか?
でも、別にたかたが生徒だから。
そんなものだろう。
「司先生って………面白いね」
彼女はーーー笑っていた。
蔑みの目線でもなく、呆れの目線でもなく、恐怖の目線でもなく。
まんべんな陽の光浴びる、ひまわりのような明るい笑顔。
「もう、焦れったいから………はい!!これ!!こうしておけばよかったね」
彼女は近寄ってきて、ぽんと胸に押し当ててきた。
「私の携帯番号。ラインが交換できないのならーー携帯番号なら先生なら安全でしょ?」
「お前………それなら、俺が犯罪にーーー」
「いいの。私が頼りにしている先生ってしておくから!!私こう見えて自分が美人だってわかってるから!!その武器を使って司先生と連絡先を交換したって事実、隠し通してみせるから!!」
姑息な満面な笑みを見せてきた彼女。
何だかずるいのか、純粋なのか、明るすぎるのか分からない。
だけどもだ。
「お前、責任取れるんだな?」
「お、何?禁断の恋愛?」
「馬鹿、違う!!連絡先を教えたってことは、ちゃんと友達として向き合うってことだ」
彼女は首を縦に振る。
まるで、何も知らない子犬のような。
そんな愛らしささえ、覚えてしまったのを首を振って。
「友達ーーー私、司先生と友達になるよ」
その声は、澄んだダイヤモンドの様に儚げで。
彼女がどれほど苦しんできたのかを、物語っていた。
「じゃあ、用事があれば俺から学校のくだらないことーーー話してやるよ」
「本当!?!?恋愛話は!?!?!」
「そんなもん、あるわけないだろ………」
「でも嬉しい!!!やっったぁあああ!!!」
扉を閉めたというのに、こんなに喜ぶとは。
だがもういい。
アイツが嫌だと言うまで、愚痴でも話してやろう。
だけどもこの後、俺達はずっとつるむことになってしまい。
例の女保健教師が俺の事をこの時こっそり、見ていたことも知らなかった。
*