その優しさに溺れる。〜一線を超えてから、会社の後輩の溺愛が止まらない〜
「深雪さん、ここの仕様、先にクライアントに確認入れましょうか」
会議室の端から届く、落ち着いた声。
耳にするだけで、体の奥がふっと熱を帯びる。
視線が交わる。それだけで胸が高鳴る。
──彼は、何でもない顔で、普通に話してくる。
「……そうですね。じゃあ私のほうで連絡しておきます」
無理に平静を装い、小さく頷く。
「僕は下調べして資料まとめておきますね」
ただの業務連絡。どちらからともなく距離を意識しているのがわかる。
それでも、どこか近く感じてしまうのは、自分のせいだ。
* * *
「これ、どうぞ」
午後の打ち合わせ前、湊が差し出したのはジャスミンティーのペットボトル。
「……え?」
「午前中ずっと喋ってたから、喉乾いてるんじゃないかと思って」
ぎこちなく受け取りながら、胸の奥がざわつく。ただのお茶、ただの気遣い。
それだけなのに、心を見透かされた気がした。
「深雪さん、これ、好きですよね」
──覚えてたんだ。
数か月前、ランチの帰り道で何気なく話した好みを、彼は覚えていた。
「……うん、そう、だったかも」
曖昧に返す。感情がこぼれそうで怖かった。すると、不意に湊が少し声を落として続ける。
「……無理に忘れようとしなくていいです」
「……え?」
「元婚約者のこと。簡単に整理できなくて当然です。
でも……僕は、どんな形でも深雪さんの味方でいます。いつでも、頼って下さい。」
その言葉は静かで、誰にも届かないくらい優しかった。胸の奥がぎゅっと締めつけられる。
──どうして、こんなにも優しいの。
泣き疲れるほど涙を流したあの夜以来、少しずつ心がほどけ、圭介のことを思い出すことも少なくなった。
それよりも、今は、心にできた小さな余白に、湊の優しさがそっと染み込んでくる。
──優しさって、怖くて、あたたかいものだったっけ。
短い時間でも、彼の言葉や仕草が自分の中の何かを動かす。
罪悪感と居心地のよさ。
ふたつの感情が交差する中で、まだ自分の立ち位置はわからない。
けれど、もう少しだけこの場所にいたい。
たとえ答えが出せなくても、彼のそばで揺れる時間が、少しずつ未来につながっていく気がした。
会議室の端から届く、落ち着いた声。
耳にするだけで、体の奥がふっと熱を帯びる。
視線が交わる。それだけで胸が高鳴る。
──彼は、何でもない顔で、普通に話してくる。
「……そうですね。じゃあ私のほうで連絡しておきます」
無理に平静を装い、小さく頷く。
「僕は下調べして資料まとめておきますね」
ただの業務連絡。どちらからともなく距離を意識しているのがわかる。
それでも、どこか近く感じてしまうのは、自分のせいだ。
* * *
「これ、どうぞ」
午後の打ち合わせ前、湊が差し出したのはジャスミンティーのペットボトル。
「……え?」
「午前中ずっと喋ってたから、喉乾いてるんじゃないかと思って」
ぎこちなく受け取りながら、胸の奥がざわつく。ただのお茶、ただの気遣い。
それだけなのに、心を見透かされた気がした。
「深雪さん、これ、好きですよね」
──覚えてたんだ。
数か月前、ランチの帰り道で何気なく話した好みを、彼は覚えていた。
「……うん、そう、だったかも」
曖昧に返す。感情がこぼれそうで怖かった。すると、不意に湊が少し声を落として続ける。
「……無理に忘れようとしなくていいです」
「……え?」
「元婚約者のこと。簡単に整理できなくて当然です。
でも……僕は、どんな形でも深雪さんの味方でいます。いつでも、頼って下さい。」
その言葉は静かで、誰にも届かないくらい優しかった。胸の奥がぎゅっと締めつけられる。
──どうして、こんなにも優しいの。
泣き疲れるほど涙を流したあの夜以来、少しずつ心がほどけ、圭介のことを思い出すことも少なくなった。
それよりも、今は、心にできた小さな余白に、湊の優しさがそっと染み込んでくる。
──優しさって、怖くて、あたたかいものだったっけ。
短い時間でも、彼の言葉や仕草が自分の中の何かを動かす。
罪悪感と居心地のよさ。
ふたつの感情が交差する中で、まだ自分の立ち位置はわからない。
けれど、もう少しだけこの場所にいたい。
たとえ答えが出せなくても、彼のそばで揺れる時間が、少しずつ未来につながっていく気がした。