その優しさに溺れる。〜一線を超えてから、会社の後輩の溺愛が止まらない〜
居酒屋は思った以上に落ち着いた雰囲気で、仕事終わりの会社員たちの笑い声がほどよく響く。
ビールの泡がグラスからこぼれそうになり、慌てて口をつける。
熱い唐揚げに舌をやけどして、ふたりして笑い合った。
──何でもない時間。
でも、いつもより少しだけ距離の近い沈黙が、ふいに落ちる。
アルコールのせいか、身体が火照っている気がした。
頬も耳も、熱い。

「……大丈夫ですか? 顔、赤いですよ」

静かで低く、耳にだけ落ちる甘い声。

「お酒、弱いんでしたっけ?」

「……平気。大丈夫だから」

グラスを持つ手が、少しだけ震えていることに気づかれたかもしれない。
そう思った瞬間、視線をそらす。

「そうですか。……じゃあ、その赤いのはお酒のせいじゃないってことで」

「なっ…」

くすっと笑う声は冗談みたいに軽やかだった。
でも、胸の奥が妙にざわつく。
──彼はきっと、全部気づいている。
私が平静を装っていることも、本当は動揺していることも。
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