その優しさに溺れる。〜一線を超えてから、会社の後輩の溺愛が止まらない〜
待ち合わせ駅前を少し早足で歩く。
ガラスに映る自分をさりげなく確認。選んだのはシンプルで少し綺麗めなワンピース。メイクもいつもより丁寧に。
──これって、やっぱり“デート”って呼んでもいいのかな。
慌てて首を振ったそのとき──
「詩乃さん」
振り返ると、湊が立っていた。
白とグレーのシャツに軽めのジャケット。無造作な髪型が整った顔立ちを引き立てる。
「……ごめん、待たせた?」
「いえ。俺が早く着いただけです」
微笑んだままじっと見つめられ──
「詩乃さん、職場のときと雰囲気違いますね。……可愛すぎです」
ストレートな褒め言葉に、返す言葉が出ず、胸の奥がどきんと跳ね、頬が熱くなるのがわかった。
***
雑貨屋。
ふたり並んで姪へのプレゼントを選ぶ。
「このぬいぐるみ、押すと音が鳴るみたいです」
「ふわふわで可愛い……姪っ子ちゃん、いくつだっけ?」
「もうすぐ三歳です。絵本もいいかなって」
「だったら、これ見て。最近のしかけ絵本、すごく可愛いし」
肩が自然に近づき、湊の真剣な横顔に心が和む。
「お姉さんと仲いいんだね」
「今は、ですね。昔は……最悪でした」
軽くはぐらかす口調だが、その目は少し遠くを見ている。聞きすぎるのはやめた。
「でも今は姪がいて。姉ともちゃんと話すようになったし。あいつの存在が、いろいろ変えてくれた感じです」
照れ笑いの湊が、少しだけ寂しく見えた。
***
プレゼント選びが終わり、湊が会計を済ませる。
「……すみません、ちょっと買い忘れがあって。すぐ戻るんで、ここで待っててもらえますか?」
「うん、大丈夫」
頷いてその背中を見送る。