不幸を呼ぶ男 Case.3

【都内・速水創の自宅ペントハウス】

巨大なモニターに
黒川皐月の、緊急記者会見の映像が
映し出されていた
腕を吊り
満身創痍のはずの女が
逆に、日本中を、挑発している
速水は
その光景を、実に楽しそうに
ブランデーグラスを、傾けながら見ていた
速水:「……なかなかに、しぶとい女だ」
彼の背後
闇の中から、音もなく、風間が姿を現す
風間:「……次は、確実に、仕留めます」
その声には
何の、感情もなかった
ただ、事実を、述べているだけだった
速水:「いや。今回は、これでいい」
速水:「あの会見で、余計なことをベラベラと話すつもりだったようだからな」
速水:「それを、止められただけで、十分だ」
風間:「はっ」
速水:「ここからは、かなり警戒するはずだ」
速水:「……消すのは、少し、難しくなるな」
風間:「……問題、ありません」
速水は、その、絶対的な忠誠心に
満足げに、笑った
速水:「……頼もしいな、お前は」
風間は、静かに、続けた
その言葉は、まるで、教典を読み上げる
狂信者のようだった
風-間:「全ては、我々の、未来のためです」
風間:「そのための、少しくらいの犠牲は」
風間:「……やむを、得ません」
二人の間に
それ以上の、会話はなかった
ただ
眼下に広がる、東京の夜景を
まるで、自分たちが、すでに
手に入れたかのように
静かに、見下ろしているだけだった。
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