ブルークレールのソワレ ー甘いお菓子と公爵様の甘い溺愛ー
ダニエルとマリーは、無言のまま向い合せに座り馬車に揺られていた。二人共が機嫌を損ねていて、お互いに嫉妬心が沸き上がっていた。捜査のためだと分かっていても何故か腹立たしい。
無言のままなのが息苦しくなったダニエルは先に口を開いた。
「マリーは踊る度に体を寄せ過ぎる」
「え、それはモリス様が近寄り過ぎるだけです。私が体を寄せているのではないです」
「楽しそうだったが。それに求婚されていた」
「そんなこと有りましたっけ?ダニエル様が邪魔をしていたことしか覚えていません。それよりダニエル様の方こそ、綺麗な令嬢たちと楽しげに踊っていましたよね」
「それは仕事だ。好きで令嬢たちと踊っていた訳ではない」
「そうですか。選り取りみどりでどう見ても嬉しそうでしたよ」
ダニエルは大声で笑いだした。マリーは何が可笑しいのか分からず不思議な顔をしていた。
「もしかして、また嫉妬か?私のことを好意に思っているのか?」
「分かりません。きれいな女性と踊っているダニエル様が嫌なんです」
「それは他の女性と踊って欲しくなということか?マリーだけを見ていて欲しいのか?」
「そうです」
恥ずかしくなって顔を両手で覆った。ダニエルは横に座り、その手をはずして顔を近づけた。
「ならば、マリーのお望み通り、君だけを見ていよう」
「近すぎます」
ダニエルは笑ってマリーを抱きしめた。こんなにも愛おしく離れ難いと思ったのは初めてだった。抱きしめた細い体は弱々しい。
そんなマリーを思えば思う程、モリスが犯人だったとして、その餌食にはさせたくない。モリスは何をしでかすか分からない怖さがある。心配ばかりが募るが、何が何でも守り抜きたいと思っていた。早くこの事件を解決させて平和な日々を願うばかりだった。
その日が来たら求婚しょうと。だがよく考えてみれば昼に子供になるマリーとは結婚はできなかった。元に戻す薬作りを急がせないといけない。マリーの体の温もりを感じながら思いを巡らせた。
お互いの温もりに癒されて、心地よい揺れが眠りを誘う。安らかな寝息が馬車の中に漂っていた。まだ公爵邸は遠方にある。