捨てられ仮面令嬢の純真
「――なるほど。レオが役目を果たしてくれましたか」
報告に目を通しマティアスは安堵の笑みを浮かべた。うなずいた将軍も同様だ。
「優秀な男だが、実戦の指揮は初めてでしたからな。送り出してからは胃が痛かった。彼が失敗すれば私も軍を辞するつもりでおったよ」
腹をさすってみせられ、マティアスは頭を下げた。
「弟に目をかけていただき感謝します。いや、将兵を死なせないよう策を練ると書いて寄越された時には、長期化するのかと気を揉みました。補給の問題もありますので」
「あくまで補佐官としての物言いをされるが、言ってもよいのですぞ。兄君として心配だったと」
「――そうですね。あんなにデカくなった弟に言うのもなんですが、私はあいつが可愛いんですよ。子どもの頃からずっと」
やわらかく目を細めるマティアスを見て、将軍はハッハッと大きく笑った。公爵家の兄弟が、得意分野は違えど仲良く国に尽くしている姿は頼もしい。マティアスは書簡をしっかりと読み返しながらホッとした顔だった。
「――国境の監視は続けさせつつ、レオはすぐに戻るのですね。報告と今後の相談のため、ですか」
「新婚の愛妻も安堵なさろう。それに――王都の雰囲気がよくないのも気になる。騎士団に彼がいてくれた方がよいと思っていたのだ」
ピリピリする騎士団と警ら隊、不満が噴出する宮廷。そんなものを憂う将軍の表情にマティアスは強く同意した。
暴動が発生する時はレオにも王都に居合わせてほしいと思い、実行の日程を遅らせたのだ。レオがすでに進発しているならば、ギリギリ間にあうだろうか。