捨てられ仮面令嬢の純真


「――街で、騒ぎが?」

 セレスはお茶を飲む手をとめた。台所がざわついていたので様子を見にいった家政婦長アネットの報告だった。使用人が買い出しに行ったのだが、市場が封鎖されていたとか。

「なんでも川岸の倉庫が襲われたそうです。他で略奪が起きないように、人が集まる場所を閉じてるんですよ、きっと」
「襲われ……」

 というと、貧しさからの犯罪だろうか。飛び火を警戒するのだから、王都全体の雰囲気が不穏なことは誰もが感じているのだ。

「買い物ができませんので保存食料だけでなんとかしないと、と料理長が申しております」
「それはかまわないわ。でも市場の皆さんが困るでしょうね」

 パン屋の明るいおかみさんはどうしているだろう。今日焼いたパンを売り切る前だったのではないか。それにその日暮らしの者たちが大変だ。その状況では仕事も食べ物も得られない。

「早く落ち着くといいけれど……」

 義兄マティアスからはあまり表に出ず安全に留意するよう手紙をもらっている。その懸念が形となってしまい、セレスは気をもみながら窓の外に視線をやった。


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