捨てられ仮面令嬢の純真


 しかし騒ぎはすぐには終わらなかった。最初の襲撃があった倉庫は鎮圧されたが、どうも首謀者は逃亡したらしい。
 翌日も警戒態勢が続いていたが、触発されたように小さな略奪行為がいくつか発生した。宰相補佐官が商人たちに掛け合って配給を始める予定だと警ら隊が布告しているが、民は半信半疑で口々にかまびすしかった。

「補佐官さまっていうと、マティアスさまか。あの人ならやるんじゃないか? ほら前も、仮面のご婦人と一緒に炊き出しをして下さったよ」
「しょせん国王陛下の側近だろ。信用できないね」
「だけど国境で戦ってるっていう騎士団のレオさんの兄さんなんだって」
「そうなのかあ。なら平気かね」
「なあ、あの仮面の人ってレオさんの奥方だそうじゃないか。傷跡を気にしてるらしいけど、レオさんはぞっこんなんだと」
「そりゃ高慢ちきの我がまま女より、あのご婦人の方がいいやね。会ったことあるけど優しい御方だったよ」

 民衆の意見は正直だ。仲のいい夫婦、信頼し合う兄弟の彼らなら何とかしてくれるかもと淡い期待が寄せられていた。


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