捨てられ仮面令嬢の純真
「……驚いたろう。戦いに行ってる間に、すまん」
マティアスは弟を優しい目で見た。どこに行くのかさっさと建物から出てしまう。門へ向かっているらしいが、レオは兄についていった。
「まあ……その要求を馬鹿げたことだと言い切れないのが、もう」
「ははは。だよな? 皆そうなのさ。会議に集まった連中で明らかに反対の顔をしてたのはヴァリエ侯爵だけだった」
ヴァリエ侯爵。ミレイユの父。セレスの父でもあるが、せっかく娘が王妃の座を手に入れたのにという思いはあるだろう。
「……俺の義父でもある人だが。そういう私利私欲にかまけているから、こうなるんだろうに」
「同意だ」
マティアスは王宮と広場をへだてる門まで歩いていった。足をとめ、外を見る。そこにレオも並ぶと、ラヴォー兄弟の姿に民衆がどよめいた。
(……さっきより人が増えてるな)
レオは軽い危機感を持った。このまま人々が王宮になだれ込むようなことがあれば――王権そのものが崩れかねない。
マティアスもさすがに眉根を寄せた。
「レオ。これはマズくないか」
「ああ――」
たがマティアスの顔には、焦りなど欠片も浮かんでいない。余裕の笑みを人々に振りまくと小声で弟に指示した。
「――おまえ、ちょっと演説をぶて」
「は?」
兄の言う意味がわからずに、レオは怪訝な顔になった。