捨てられ仮面令嬢の純真

 ――そして外に出たマティアスは、父公爵に向き直る。難しい顔だ。

「父上、私は即位を要請されると思いますか」
「マティアス――逆に問おう、今のままでよいと思うのか?」

 その言葉で父の覚悟がわかった。
 王家の血を引くとはいえ臣下の身から成り上がる王位。不満も敵も多く出よう。それを支えるのは並大抵のことではないが、やるしかない。ラヴォー公爵はそう言った。
 マティアスはクシャ、と顔をゆがめて微笑んだ。だがすぐに――真顔になる。

「現状は打破せねばなりません。しかし――私は王位に就く気など、毛頭ありませんよ」

 その言葉に凍りついた公爵は、息子の真意をはかりかね険しい視線を送った。


  ✻ ✻ ✻


 ラヴォー家の父と長男が厳しいやり取りをしている頃、次男であるレオは王都にたどりついたところだった。
 だがそこで異変に気づく。街の門に、普段はいない騎士団員の姿があった。

「あーっ! レオ! おっかえりー!」

 ぶんぶんと手をふったのはウスターシュだ。レオが帰着するはずということで、フェルナン団長が派遣しておいたのだった。
 不意の出迎えにレオは困惑する。だがウスターシュは容赦なくレオの馬の轡を取った。

「いやいや、なんだよ? 俺の手綱なんか引かなくていいぞ」

 友人にそんなことをさせておけない。馬から下りるレオにウスターシュはエヘヘと笑った。

「ちょっと昨日から、市中で暴動が起きちゃっててさ」
「はあ!?」

 レオは目をむく。暴動とは穏やかじゃない。そんな報告をウスターシュにさせないでほしかった。緊迫感がなさすぎて気持ちが迷子になる。
 ウスターシュは苦笑いで説明した。貧民により外国商人の倉庫が襲われ、鎮圧したこと。だが似た案件がちまちまと発生していること。おかげで市場などを封鎖せざるを得ず、住民が困窮しそうなこと。
 レオはため息をこらえた。王都の民が不憫な状況なのはわかっていたが、そんなことになってしまったのか。

< 125 / 150 >

この作品をシェア

pagetop