捨てられ仮面令嬢の純真
 ウスターシュと共に、レオは王宮へ向かった。早く館に帰りセレスの顔が見たいが仕事は完遂しなくてはならない。

 途中、街路の寒々しさに胸が苦しくなった。真冬のこととはいえ、こんなにひっそり――いや、ピリピリしているのを見たことがあるだろうか。人々が道端にうずくまったり、扉の隙間から様子をうかがったりしている。
 行きあった騎士団の仲間たちはレオに戦勝の祝福を伝えてくれた。こんな状況にあると、レオの帰還は心を軽くしてくれる報せなのだ。

「……こちらも大変だったんだな」
「だねー。まあ俺らは指示に従うだけだよ。飛び回ってるフェルナン団長と宰相補佐官殿は苦労してそうだけど」

 ウスターシュはニカッと笑う。

「補佐官殿、ずっと陛下をなだめすかして働かせてるんだってさ。団長が同情してた」
「同情……はは……」

 その感想は喜べない。
 今回の騒ぎでリュシアンへの評価が各所で決定的に悪化したのだと知れた。



 王宮前の広場には人が集まってきており、警戒の騎士団員が何重にも門を守っていた。
 物資を配給するという話に期待して来た貧しい者が多い。だが身なりの整った連中もいて、それは商会から寄越されたのだろう。提出した要望書への反応をうかがっているのだ。

「……これは何を待ってるんだ?」
「うーん。配給じゃなさそうな人もいるね」

 退位要求があったことを末端のウスターシュはまだ知らない。レオと一緒に首をひねった。
 広場に馬を曳いてやって来たレオの姿は目立つ。旅装のその人が「騎士団のレオさん」だとわかり広場はざわついた。国境で勝ったらしいと噂になっていたのだ。小さく歓声があがり、レオは手を挙げて応えた。

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