捨てられ仮面令嬢の純真
「――なん、なんだ! どうして私を閉じ込める!? そんな不敬が許されると思うなよ!」
リュシアンがわめくのを、騎士団員が槍を突きつけて私室に押し戻した。
一歩引いてながめる宰相と騎士団長は、なるべく冷たい目を保つ努力をしていた。王子の頃から見守ってきたリュシアンだ、個人的には憐れみの気持ちも大きい。
だが、どうしようもなかった。
国政をおろそかにし妃との生活に溺れるだけの王を戴く余裕など、今のマルロワにはないのだから。
「――リュシアンさま」
ラヴォー公爵は名を呼んだ。「陛下」ではなく。
その意味するところがわかったのか、リュシアンはギクリとした。
「公爵、それは――」
「残念です。おそれながら、伯父としてリュシアンさまの成長を楽しみにしておりました。ですがあなたは臣下の期待に応えて下さらなかった」
「何だと……」
「私どもはリュシアンさまに、速やかな退位宣言を求めます」
ラヴォー公爵が申し渡すとリュシアンは蒼白になった。
「わた、私を廃位するというのか……」
「できれば自主的な退位を、とお願いしております」
「まだ跡継ぎだって産まれていないんだぞ! 王なくして国をどうするつもりだ!」
「――あなたでも国のことを気にするんですなぁ」
とぼけた声が割り込んだ。