捨てられ仮面令嬢の純真
「私は柄じゃないと思うんだがなあ。今、高位の貴族たちで会議中さ。当事者なので中座してきた」
「ああ……いや、しかし兄さんなら立派に」
「まあまあ」
マティアスは軽い調子で笑うとレオの背を押して部屋の外へうながした。どこへ行くのかセレスのことも手招きし、二人に上着を持たせた。
向かうのは王宮の門だ。今は謁見などできない。ここで待機していても無駄だった。
「陛下は何も知らされず部屋に軟禁されているよ。レオが戦果を奏上する相手は未定だ」
「……なんてこった」
廊下を歩きながらレオはクシャ、と髪の毛をかき回した。
カツカツという三人分の足音がむなしく響く。王位とはこんなにあっけなく奪われるものなのか。豪奢な王宮などただの張りぼてだと身にしみた。
「……驚いたろう。戦いに行ってる間に、すまん」
マティアスは弟を優しい目で見た。
「俺の留守にそんなところまで……だがその要求が馬鹿げていると言い切れない空気なんだな」
「ははは、そうなのさ。会議に集まった連中も、明らかに退位に反対の顔をしてたのはヴァリエ侯爵だけだった」
「申し訳ありませんわ」
セレスが謝罪した。
ヴァリエ侯爵。セレスの父。ミレイユの父でもあるので、せっかく娘が手に入れた王妃の座を惜しむ思いがあるのだろう。レオは苦言を絞り出した。
「俺の義父でもある人だが。そういう私利私欲にかまけているから、こうなるんだろうに」
「同意だ」
マティアスは王宮の門をのぞむ所まで二人を連れていった。外には群衆が詰めかけている。
(……どんどん人が増えてるな)
レオは危機感を抱いた。このまま人々が王宮になだれ込むようなことがあれば――王権そのものが崩れかねない。
マティアスも眉を下げる。だがその顔には焦りなど欠片も浮かんでいなかった。
「ちょっとマズい感じだろう? だからレオ、ひとつ演説をぶってくれ。できれば男爵夫妻で寄り添ってやらかしてほしいんだ」
「は?」
兄の言う意味がわからずに、レオは怪訝な顔になった。
「ああ……いや、しかし兄さんなら立派に」
「まあまあ」
マティアスは軽い調子で笑うとレオの背を押して部屋の外へうながした。どこへ行くのかセレスのことも手招きし、二人に上着を持たせた。
向かうのは王宮の門だ。今は謁見などできない。ここで待機していても無駄だった。
「陛下は何も知らされず部屋に軟禁されているよ。レオが戦果を奏上する相手は未定だ」
「……なんてこった」
廊下を歩きながらレオはクシャ、と髪の毛をかき回した。
カツカツという三人分の足音がむなしく響く。王位とはこんなにあっけなく奪われるものなのか。豪奢な王宮などただの張りぼてだと身にしみた。
「……驚いたろう。戦いに行ってる間に、すまん」
マティアスは弟を優しい目で見た。
「俺の留守にそんなところまで……だがその要求が馬鹿げていると言い切れない空気なんだな」
「ははは、そうなのさ。会議に集まった連中も、明らかに退位に反対の顔をしてたのはヴァリエ侯爵だけだった」
「申し訳ありませんわ」
セレスが謝罪した。
ヴァリエ侯爵。セレスの父。ミレイユの父でもあるので、せっかく娘が手に入れた王妃の座を惜しむ思いがあるのだろう。レオは苦言を絞り出した。
「俺の義父でもある人だが。そういう私利私欲にかまけているから、こうなるんだろうに」
「同意だ」
マティアスは王宮の門をのぞむ所まで二人を連れていった。外には群衆が詰めかけている。
(……どんどん人が増えてるな)
レオは危機感を抱いた。このまま人々が王宮になだれ込むようなことがあれば――王権そのものが崩れかねない。
マティアスも眉を下げる。だがその顔には焦りなど欠片も浮かんでいなかった。
「ちょっとマズい感じだろう? だからレオ、ひとつ演説をぶってくれ。できれば男爵夫妻で寄り添ってやらかしてほしいんだ」
「は?」
兄の言う意味がわからずに、レオは怪訝な顔になった。