捨てられ仮面令嬢の純真
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「私が、ラヴォー公爵家のご次男さまに?」
父から告げられてセレスはぼう然と立ちすくんだ。
ここはヴァリエ侯爵の屋敷。父の部屋に呼ばれて来たら、次の縁談が決まったと言われたのだった。
相手はレオ・ド・ラヴォーだという。セレスはやや青ざめた。
レオは王宮に伺候するとよく挨拶してくれる騎士だし、誠実そうな人だと思う。だが婚約破棄され倒れた姿を見られた相手でもあるのだ。羞恥心が先に立った。
「それは公爵家からのお申し入れでしょうか」
「殿下のご命令だ」
ヴァリエ侯爵は諦めた顔で言った。だからつべこべ言うな、ということだ。
セレスはまた絶望の淵に落とされた。リュシアンはさんざんセレスを振り回したくせに、まだ指図しようというのか。
「……そっとしておいてはいただけませんの」
「おまえが独り身でいては外聞が悪い、とおっしゃっていた。ミレイユがつつがなく王妃に立つためだ。飲み込んでくれ」
父の言葉もセレスの心を圧しつぶす。
姉の婚約者を奪い取った妹のために、どうしてセレスが犠牲にならなければいけないのか。お払い箱になったうえ、そんな。
だがセレスに拒否権はないのだ。それが貴族の家に生まれた娘のさだめ。
「……承知いたしました」
何も言い返せず、セレスは作法どおりのお辞儀をした。