捨てられ仮面令嬢の純真
✻ ✻ ✻
セレスとレオの結婚準備は早急に進められた。とはいえ諸々の手続きや新居の準備などがあるので、早くても夏の終わりになってしまうのだが。そう伝えるとリュシアンは不満げだったらしい。
リュシアンは父の喪が明けたら即位する。だがそこから間を置かず、自身の婚儀と王妃のお披露目も行いたいという考えらしい。
だからその前に「セレスティーヌには片付いて、ほとぼりが冷めていてくれないと困る」のだそう。どこまでも勝手だ。
「俺は気楽な男爵だ。派手な式をして目立つこともあるまい」
レオはそう考えた。男爵――今のレオはそんな地位につけられてしまっている。
騎士団員とはいえレオは爵位を持っていなかった。そんな男に元婚約者を押しつけるのは外聞が悪い、とリュシアンは王領の一部をレオに与えて叙爵したのだ。その裏でもマティアスが暗躍していたようだが。
「だってレオがやらされてるのは殿下の尻ぬぐいだろう。おまえが内心大喜びなのは置いといて、少しくらいの強請りたかりは許されるさ」
リュシアンにしてみれば罪ほろぼしになるのだから、ありがたくもらっておけとマティアスは弟を励ました。
それにこの措置には宰相ラヴォー公爵の危機感も反映されている。
与えられた領地は国境に面していた。隣のビルウェン王国は歴史と格式のある、素朴な国だ。
こちら側、マルロワ王国とは何かと対になり比べられてきたビルウェン。国境が動いたことは何度もある。マルロワが弱体化している今、どう出るかわからない相手だ。だからレオを要衝に置いた。
「あと、おまえに下賜された土地の隣にセレスティーヌ嬢の所領がある」
「は?」
「慰謝料だったらしい。頬の傷の――」
実はセレスは個人として領地を持ち、経営しているのだ。王太子をかばって怪我をしたセレスへと、先王から贈られた土地だった。
「現地に代理人を置いてはいるが、ちゃんと管理しているらしいぞ。才女を妻にもらえるなんてレオは果報者だな」
「そ、そうだったのか……」
レオの中でますますセレスへの尊敬の念が高まった。
セレスとレオの結婚準備は早急に進められた。とはいえ諸々の手続きや新居の準備などがあるので、早くても夏の終わりになってしまうのだが。そう伝えるとリュシアンは不満げだったらしい。
リュシアンは父の喪が明けたら即位する。だがそこから間を置かず、自身の婚儀と王妃のお披露目も行いたいという考えらしい。
だからその前に「セレスティーヌには片付いて、ほとぼりが冷めていてくれないと困る」のだそう。どこまでも勝手だ。
「俺は気楽な男爵だ。派手な式をして目立つこともあるまい」
レオはそう考えた。男爵――今のレオはそんな地位につけられてしまっている。
騎士団員とはいえレオは爵位を持っていなかった。そんな男に元婚約者を押しつけるのは外聞が悪い、とリュシアンは王領の一部をレオに与えて叙爵したのだ。その裏でもマティアスが暗躍していたようだが。
「だってレオがやらされてるのは殿下の尻ぬぐいだろう。おまえが内心大喜びなのは置いといて、少しくらいの強請りたかりは許されるさ」
リュシアンにしてみれば罪ほろぼしになるのだから、ありがたくもらっておけとマティアスは弟を励ました。
それにこの措置には宰相ラヴォー公爵の危機感も反映されている。
与えられた領地は国境に面していた。隣のビルウェン王国は歴史と格式のある、素朴な国だ。
こちら側、マルロワ王国とは何かと対になり比べられてきたビルウェン。国境が動いたことは何度もある。マルロワが弱体化している今、どう出るかわからない相手だ。だからレオを要衝に置いた。
「あと、おまえに下賜された土地の隣にセレスティーヌ嬢の所領がある」
「は?」
「慰謝料だったらしい。頬の傷の――」
実はセレスは個人として領地を持ち、経営しているのだ。王太子をかばって怪我をしたセレスへと、先王から贈られた土地だった。
「現地に代理人を置いてはいるが、ちゃんと管理しているらしいぞ。才女を妻にもらえるなんてレオは果報者だな」
「そ、そうだったのか……」
レオの中でますますセレスへの尊敬の念が高まった。