捨てられ仮面令嬢の純真


 一方自室に戻ったレオは悶々と頭を抱えていた。

(セレスティーヌ……あんな無防備な姿を見せられて引き返すとは、俺はなんと情けないっ)

 寝台に飛び込んでも寝られそうにない。とりあえず棚から酒の瓶を取り出すと備えつけのコップに少し注いだ。ひと口あおる。

「ふぅ……」

 ほんの少し落ち着いたが、後悔は消えなかった。ぐしゃ、と髪をかきまわす。負け犬になった気がした。初夜に妻から逃げる夫とはいったい。
 だってセレスは見るからに緊張していた。いっぱいいっぱいの状態で椅子に座っているのが伝わり――そんな新妻に体を開かせるなんて極悪非道なことができなくなった。レオはセレスを大事に大事にしたいのだ。
 何年片想いをしていたか数えてはいないが、これでも筋金入りのセレス推しだ。妻に迎えるなんて幸運に見舞われたものの、それだけにコトを始めたら自分に歯止めが効くかどうか自信がない。
 ……そして逆に体力には自信があった。最悪だ。ひと晩めでその気持ちをぶつけ過ぎ、おびえて混乱するセレスに嫌われたら――。

「死ねる」

 レオは小さくうめいた。
 抱き潰したりしたら、翌朝セレスから恐怖と軽蔑の視線をくれられること間違いなし。あんなに貞淑で楚々とした女性なのだから。
 正常な夫婦関係というものはどうしたら構築できるのだろう。
 レオはセレスの体が欲しいのではなかった。いや、それも欲しいが真実手に入れたいのは――彼女の心だ。


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