捨てられ仮面令嬢の純真
  ✻ ✻ ✻

 それぞれ悩み抜いた夜が明け、夫婦は別々に起き出した。
 朝食のため身支度をととのえるセレスを手伝いながら、侍女のコラリーは寝台が乱れていないことに気づいたが何も言わなかった。
 一方のレオは無表情に出仕の支度をし、食堂に姿をあらわす。入り口で待っていたセレスは、名ばかりの夫へ悲しげに微笑んだ。

「おはようございます」
「おはよう」

 初めて交わす朝の挨拶はぎこちない。だがそのぎこちなさが照れや甘さからではないと、その場にいた使用人たちはピンときた。執事のダニエルが素知らぬ顔で確認する。

「レオさま、本日は王宮にご出仕でしたか」
「そうだ。この格好を見ればわかるだろう」

 ブスっとした声が返ってきた。ダニエルは内心でため息をつく。これは何かがうまくいっていないようだ。

「今日ぐらい、休暇をいただいても罰は当たらなかったのでは? 昨日結婚したばかりの奥さまを放ったらかすのですか」
「……いいんです」

 セレスは遠慮がちに口を出した。

「騎士団の皆さまにご迷惑をおかけするのは気が引けますから」
「まあまあ、奥さまは控えめでいらして。ささ、お二人ともお席に」

 アネットも新婚夫婦に引っかかりを感じているらしい。使用人たちは意味深な目配せを交わした。家の中で起こることなら、彼らの目はごまかせない。
 だが彼らは主人に忠実だ。セレスとレオ、二人を応援する気まんまんなのだった。


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