捨てられ仮面令嬢の純真
セレスが毎晩、レオに申し訳なさそうにしているのがいたたまれなかった。女性から誘うなんてこと、清楚なセレスにはできないのもわかる。
「だけど俺は、妻の義務として子を産めとか、そんなことは思っていないぞ」
「はあ。公爵家にも王家にも、レオさま以外から子が産まれるなら別にかまわないとは思いますが」
「だからセレスティーヌに無理はさせたくない。それだけを求めて妻にしたわけじゃないからな」
キリッ。理解ある男として言ってみせたレオをダニエルは冷たい目で見た。
「でも奥さまは、とても真面目な方だとお見受けしますよ?」
「う、うん?」
「妻の義務も果たせない自分など……とか思い詰めるタイプかと」
「ぐっ……そうだな」
「ちゃんと言わなければ悩ませるだけです。レオさまのことを愛せないなら白い結婚でかまわないのだ、とお伝えするのがよろしいのでは」
「愛……せない、なら」
その言葉でレオは勝手にダメージを受けた。だってセレスから愛して欲しいと思っているし。
目を伏せるレオにダニエルはこんこんと言い聞かせた。
「奥さまを大切に思うのなら、ちゃんと仲を深めましょう。徐々に距離を詰めるんです。怖がられないよう、少しずつ」
「……しかし、どうやって」
煮えきらないレオに苛立つのをダニエルは必死に抑えた。なんだかもう、公爵家は教育を間違えたかもしれないとまで思う。
「まず物理的なところからいきなさい! 手を握るとか、髪をなでるとか、そっと背に手を添えてエスコートするとか、そういうのを!」
「お、おう……」
ダニエルから漏れるイライラに気おされ、レオは不得要領なままうなずいた。