捨てられ仮面令嬢の純真
――カツ。カツ。
磨き上げられた大理石の廊下にセレスの靴音がひそやかに響く。
大きな窓から入る陽射しは明るいのに、セレスの心は沈んだままだ。高い天井のフレスコ画も、飾られた優美な形の壺や活けられた花々も、気持ちをなぐさめてはくれなかった。
「――これは、ヴァリエ侯爵家ご息女殿」
力強いが礼儀正しい声を掛けられたのは馬車寄せへと向かう途中だった。
セレスに対して無駄のない礼を取ったのは若い男性。やや癖のある栗色の髪で、騎士団の隊服を身につけている。
「ラヴォー公爵家のご子息さま」