捨てられ仮面令嬢の純真
(セレスティーヌから婚約者を奪って王妃になるミレイユが妊娠だと? 結婚前に? 俺はまだセレスに口づけすらしていないのに!)
考えたことはただの八つ当たりのようだった。でも、とてつもなく切ない。
しかし前倒しになった儀式を手配しなければならないマティアスは切実なのだった。うんざりと肩をすくめる。
「いろいろ忙しいんだが、とりあえず常識の範囲でやるように進言はしてる。おまえのところに無茶ぶりがきたら、こっちに相談しろ」
「無茶ぶり? どういうことだ」
そこでマティアスは声をひそめた。
「次女殿だ。姉君をブライズメイドにするとか言い出してな。それは体面が悪いと殿下に却下してもらった」
「……セレスティーヌに、だと」
「人妻にやらせることじゃないよ。ま、妹なりにこじらせて暮らしてたんだろう。姉はいずれ王妃になって、自分は一生その下だ、とか。立場が逆転して勝ち誇ってるのさ。怖い怖い」
レオの結婚式でミレイユは、姉のセレスを見下して嗤っていた。その下品な華やかさを思い出し、レオの表情が歪む。マティアスはポンと肩を叩いて弟をなだめた。
「出席する以外、おまえたち夫婦は何もする必要はない。俺たちは殿下の従兄だし、奥方は妃殿下の姉だから参列するしかないが……」
「わかってる。兄さんも大変だろうが、俺も警備に関しては協力するぞ」
「当日の警備に回るのは許さんからな? 奥方の面子をつぶすなよ」
元々の婚約者だったセレスが独りぼっちで参列したら大変なことだ。リュシアン・ミレイユ夫妻も非難されるだろうが、セレスへ向けられるのは盛大な哀れみの視線。
「……そんなことはしない」
レオはグッとこぷしを握った。
その日は絶対、セレスの幸せを見せつけてやる。美しく気品あふれるレオの妻を、国王となったリュシアンに自慢してやるのだ。