捨てられ仮面令嬢の純真
そのダニエルは、最近しばしばセレスと勉強会を開いている。新しく管理することになった領地の経営状態について調べ、問題点の洗い出しをしているのだ。隣接するセレスの所領のことも含めてできるので効率がいい。
「私の領地はのどかな村々だと思っていたのですが……レオさまが治める土地は、あの地方の要なのですね」
「さようです。小さいですが町があり、国境寄りには砦もある。隣国ビルウェンとの間には街道が通じております。そのような場所なので、軍事を学んだレオさまの所領とするにふさわしいと判断されたのでは」
ザッと資料に目を通しただけで地理を把握するセレスに、ダニエルは舌を巻いた。ただ小鳥のようにさえずるご令嬢たちとは違うと思い知らされたのだ。
セレスは王太子妃になるはずで、その後には王妃としてリュシアンを支えるべく政治を学んだ女性。飽きっぽいリュシアンに代わり様々な書状への返書を下書きすることもあったそうだ。
(……こんなお方を手放して、王宮はどうなっているのだろう)
我がまま放題のミレイユに怒りを隠さないレオの愚痴を聞く限り、良好ではないはずだ。ダニエルは連日帰りの遅い主人に同情している。
「……ねえダニエル、この陳情をどう思う?」
セレスから示された箇所を見て、ダニエルは首をかしげた。レオの領地のことだった。