捨てられ仮面令嬢の純真
この場合お金をケチっていられないのはわかる。でもセレスは提案した。
「礼装なら、侯爵家の頃に作ったものがあるわ。それを着ましょう」
「はあ……すんなりしたデザインのローブですから流行もありませんし、新たに作らなくてもまあ」
アネットは渋々了承した。レオは自分の力でセレスを美しく装わせたいと思っていたのだが。不満の残る顔のアネットにセレスは言い聞かせた。
「一着でも注文が減れば、どうしても必要なものを仕立てる方々が助かるでしょう?」
「まあ、奥さま……!」
その配慮にアネットは感激した。でもセレスがそう思ったのは、身内――妹の不始末が原因だからだ。ミレイユにはモヤモヤするが、他人に迷惑をかけるのはできるだけ防ぎたい。
三人はそろってクロゼットをチェックしに移動した。
セレスの衣装は侯爵家からすべて持ってきている。コラリーもいちおう中身は把握していたが、次々と服をチェックしながらあらためて考えをめぐらせた。
「ローブは……染みも虫食いもないし、無事です。これは着られますよ」
「まあ、よかった。じゃあそれは再利用させていただきましょう」
「あのーアネットさん。式参列用の控えめドレスってあれですね、白は着ちゃだめで、スッキリした感じの」
訊いておいて、コラリーは返事を待たなかった。完全に自分の世界にひたってブツブツつぶやき始める。
「ああ……この深い赤のドレス、秋めいて素敵ですよ。少女っぽいフレアは縫い直して、余った布で仮面を作るのがいいかなあ。うふ、トーク帽のチュールの下にのぞくミステリアスマスク最高よね……あらら、こっちの緑のドレスは奥さまの瞳にお似合いだし……ちょっと華やかさを足して今風にアレンジしたら舞踏会いけるってば。ふふっ……」
「……コ、コラリー?」
早口でグフフと笑いながらセレスのドレスを物色するコラリー。セレスとアネットは困惑しきりだ。
実はコラリーは、これまで古着のアレンジや仕立て直しで小銭を稼いできた達人らしい。この分野ならば、腕に覚えがあるのだった。