捨てられ仮面令嬢の純真

 ぐい。セレスを胸におさめる。ふわりと揺れるセレスの髪がレオの耳をくすぐった。

「え……レ、オさま……」
「ありがとう」

 ぎゅ、と感謝を伝えたレオは腕をゆるめた。でもまだ腕の中ではセレスが驚いて硬直している。
 二人のまなざしが絡んだ。事態を理解したセレスは、やっと顔を真っ赤にする。

「き、気に入っていただけて、よかったです……」

 慌ててしまい、どもった。
 セレスは後ずさって腕から抜け出すと、クルリ駆け出す。自分の部屋のドアを開けたところで思い出し振り向いた。恥ずかしげに揺れる翠の瞳。

「あの――おやすみなさいませ」
「――ああ。おやすみ」

 パタン。小さな音をたて閉まるドアを、レオは幸せな気持ちで見送った。
 踊るという決意は叶わなかったが、もういい。手の中にセレスからの贈り物があるから。そして――セレスを抱き寄せることができたのだから。
 すっぽり包んだ腕の中から見上げるセレスを思い出す。ポプリと同じ香りがしたのは、レオへの贈り物をずっと持ったままで帰りを待っていたからだろう。

(――なんていじらしい)

 レオのためにとセレスが考えてくれたことに満足し、ダンスの練習などどうでもよくなった。
 その晩レオは、ポプリの香りに包まれゆっくり眠った。


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