捨てられ仮面令嬢の純真
セレスはその日、レオ以外と踊らなかった。レオもセレスとしか踊らない。疲れたら二人でテラスへ出て火照りを冷ました。
レオはもう、セレスの手を離さなかった。それは帰宅する馬車に乗っても同じだ。
「セレスティーヌ――」
ぴたりと腰をつけて座ってもセレスは逃げなかった。レオはそっと妻の手の甲に唇を落とす。
「レオさま」
「――愛させてくれるか?」
意味をこめたその言葉にセレスは無言だ。恥じらって何も返せない。うるさい鼓動がレオに聞こえそうで困った。
だけど精いっぱいの気持ちをあらわしたかった。セレスはそっとレオの肩へ頭をもたれさせる。怖れではなく喜びにふるえるセレスの体を、レオの腕が力強く抱きしめた。
セレスのおとがいにレオの指先がかかる。二人の熱いまなざしが絡まった。薄紅の唇がためらいにわなないたが――優しくふさがれる。
馬車の中で寄りそう二人を、ガラガラという車輪の響きだけが包んでいた。