捨てられ仮面令嬢の純真
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 セレスとレオの仲が深まったのは、館の使用人たちにはすぐにわかった。二人のかもし出す空気が変わったからだ。
 探り合うようだったのが全幅の信頼へ。そう感じて執事ダニエル・家政婦長アネット・侍女コラリーらは、安堵で胸をなでおろしている。

「セレスティーヌ、今日は街へ出てみないか」

 レオが提案したのは休日の朝食の席だった。
 式典前に忙しくしていたレオは、何かと休暇を申請し勝ち取ってくる。「新婚の妻をずっと放っておいたので温情を」と団長に訴えたらしい。
 そんなことを言われても全団員がしばらく忙しかったのだが、騎士団長は苦笑いで認めてくれた。レオとセレスの身分を考えてだ。高位貴族出身で今も爵位持ち、ということではない。新王夫妻との因縁を思えば大変だったろうという、ねぎらいの気持ちによるものだった。

「街ですか?」
「あまり行ったことがないと言っていただろう? 俺はいつも巡回しているから、セレスティーヌにも見せてやりたい」

 レオの言葉にセレスは花がほころぶように笑う――だが変わらず顔の右半分は仮面でおおわれていて、レオは少し悲しかった。妻の素顔を見たいというのは贅沢な願いではないと思うのだが。

「どこに行きたい? 街並みならば馬車からながめているだろうから……買い物でもいいし、劇場で芝居見物という手もある」
「……馬車では入れない路地や、市の立つ広場などには行けますか?」

 セレスは遠慮がちにおねだりした。

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