捨てられ仮面令嬢の純真
「食べ――でも私まだ、お腹がすいていないのですけど」
「そうか? うーむ、俺のオススメのやり方があるんだが」
レオはもったいぶって眉根を寄せた。そんなことをされたらセレスだって気になる。街の様子だけでなく、レオがいつも何をしているのかも知りたいのだった。
「どんなやり方ですか。教えてくださる?」
「もちろん。セレスがあまり食べられなくても俺が平らげるから問題ないな」
ニッと笑ったレオは、ずんずん歩き出した。市場のテントに分け入ると、パンの山の向こうに声をかける。
「やあ、売れてるかい」
「おや騎士団のレオさんじゃないか。今日は休みかい」
あっけらかんと返事をしたのは、パンのようにふくふくして笑顔がやわらかい中年女だった。
「でもなんだい、レオさん。格好つけた服で……あらら、そちらは」
「俺の奥さんさ。美人だろう」
「あっはっは、結婚したって言ってたっけねえ。嘘じゃなかったんだ」
「ひどいな、信じてなかったのか」
軽口を叩きあうが、周りの店の者たちは気にも留めなかった。レオはいつもこうして街の人々と話しているらしい。
驚いて何も言えないセレスが会釈だけすると、パン屋のおかみはケラケラ笑った。
「ほんとに可愛らしい人だこと。でもその顔、どうしたの。あばたが残ってて気にしてるとか?」
セレスの仮面を見たパン屋のおかみは遠慮なく尋ねてきた。水ぶくれと高熱の病は定期的に流行するから、セレスのもそうだと思ったのだろう。
「そんなの病気で死ななかった丈夫な体の証拠だろうに。堂々としてりゃいいのさ」