捨てられ仮面令嬢の純真

「そう言わないでくれ。うちの奥さんはちょっといい家の出なんだ。周りに言われていてね。セレスティーヌ、気の済むようにしていいんだぞ」

 さすがにレオが間に入った。セレスの心の傷に直結する話題だ。だがセレスは落ちついた声だった。

「丈夫な証拠……そうですね。ありがとうございます」
「やだよ、ありがとうなんて。ほらレオさん、何か買っとくれ。買わないなら商売の邪魔だよ」

 礼を言われて照れたのか、パン屋のおかみはシッシッと手を振った。レオは笑って小銭を握らせる。

「買いに来たんだよ。いつものを――悪いがひとつだけ。セレスティーヌは小鳥みたいに小食なんだ」

 パン屋は丸いパンに包丁で切れ目を入れて渡してくれた。レオはパンを手にさっさと離れていく。セレスはわけもわからずついていった。
 次に顔を出したのは野菜が積んである店だった。そこでも同じように言葉をかわしながら、こんどは大量のクレソンをパンに挟む。
 そしてチーズ屋で薄切りのチーズ、肉屋の鉄板からは岩塩を振った焼肉を手に入れて――。

「完成だ。どうだ、うまそうだろう? これにリンゴ酒を買って一緒にかぶりつくと最高でな」

 できあがった具沢山サンドを示してレオは得意げだった。セレスはあきれて立ち尽くしてしまう。なんて雑な料理だろう。しかも外で、こんな。

「……レオさま。よくこうして?」
「うん、まあ。行儀が悪いのは承知しているが」
「そうですね……」

 セレスはきちんと作法を守って生きてきた女性だ。街角で立ち食いだなんて方式があるとは。しかもこのサンドイッチ、大口を開けないと食べられそうにない。

「でも……とても美味しそうだと思います」

 熟考の末、市場特製サンドの魅力にセレスは屈する。食べたそうにする妻を見て、レオはいたずらな顔で笑った。

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