捨てられ仮面令嬢の純真
後ろではふたたび怒声が聞こえる。少年が捕まったようだ。だが振り向いたセレスは耳を疑った。
「ちくしょう、こいつ持ってねえ!」
「おれ、なにもしてねえもんっ」
追いかけていた男が地団駄を踏んでいる。確かに下手人だったはずの少年が、盗品を所持していないのだ。驚きに立ちすくむセレスだったが、そこにレオの声がした。
「おい、犯人はこっちだ!」
横道から戻ってきたレオは、男を後ろ手にねじ上げ引きずっている。さっき少年にぶつかられた男だ。
「盗まれたのは、この袋で間違いないか」
「あ、ああそうだ」
少年を捕まえた方の男はきょとんとしているが、取り押さえられている少年は青ざめる。レオは肩をすくめた。
「よくある手口だ。途中で仲間に渡しただけだぞ」
「こいつらグルなのか! いや、あんたなんでそんな……?」
「あー、俺は……騎士団に勤めているんでな……」
レオは居心地悪そうにボソボソ言った。今日は隊服ではないのを忘れていたのだ。