捨てられ仮面令嬢の純真


 夜、ひとりの寝台に入ろうと仮面を外したセレスは、リュシアンの言葉を思い出して身ぶるいした。「寝台でも外さないつもりか」。
 あのリュシアンなら、セレスが嫌がろうとも仮面をむしり取るだろう。傷跡を灯りで照らし出し嘲笑するぐらいのことはするのではないか。

 傷に手をふれてみる。
 線状に、ほんの少しの盛り上がりが感じられた。鏡で見ると、ややのっぺりした質感でほんのり薄紅色をしている。
 大したものではない。だけど貴族の娘としてはどうなのだろう。社交界で美しい花となるべく生まれたはずのセレスなのに――。

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