捨てられ仮面令嬢の純真
(……綺麗な人だった。レオさまには、よそに恋人がいらしたの?)
無言で帰宅したセレスはひとり自室にこもり、そんなことばかりグルグル考えていた。
オロオロするダニエルは道中、「あのあたりで事件でもあったのでは」「レオさまは奥さま第一ですから」となぐさめてくれた。でもそれもむなしい。
(私などじゃ、やっぱり駄目なのかしら。レオさまには――愛されていると思ったのだけど)
すっかり自信がなくなる。昼間には子どもや民のために何かしなくてはと奮い立っていたのに、そんな炎は胸から消えてしまった。
(レオさまが、私の力の源なのよ)
泣きたくなった。寄る辺のない子どものように。
(……ああ。きっと孤児院の子どもたちも同じなんだわ。愛されていないと思うから、何をする力も出ないのね)
彼らはおそるおそる生きているのだ。食べるだけで、息をするだけで怒鳴られるかもしれないと怯えながら。だから新しいことを学ぶ気になどなれないし、誰かを信じることもできない。
(私……私は? レオさまを愛しているのではないの?)
受け身でいるなんて嫌だった。セレスがレオを愛するのは、彼が甘やかしてくれるからじゃない。
(――私があの人を愛していれば、それでいい)
セレスはこぶしでキュ、と胸を押さえた。
この愛は、セレス自身のものだ。