捨てられ仮面令嬢の純真
べーレンツ伯は正攻法で着々と戦うタイプの指揮官だそうで、不測の事態に対処するのは苦手だそうだ。
「割譲後に伯の虚偽報告が問題となり、彼は失脚するというわけで」
「味方にはめられるとは哀れな男だ。貴国の中のことに口を挟む気はないが」
マティアスは微妙に気まずそうにした。そんなところも好人物っぽく、ギードは自分の目の確かさに自信を持つ。あまり有能すぎる人間が隣国を率いるのは困るのだ。リュシアンのような無能は論外だが。
「では、こちらも裏で出陣の肚づもりはしておく」
「マルロワはどなたが率いるので?」
ギードは探る目になった――レオではないかと目星はついているが、確認だ。
「……あそこの領主は、私の弟でな。あいつを行かせるのが自然なのだが。まだ土地も兵も把握していないし心配ではあるんだ」
「いえいえ、性急に戦端を開かぬよう指示いたしますよ」
レオが騎士として人望があるのをギードも知っていた。だが公爵家の次男坊で育ちが良く、おそらく実戦経験もほぼないはず。ズルズルと睨み合いをしてくれるのではないだろうか。
「わかった。私からも弟には無理をしないよう言っておこう」
マティアスはうなずき、ギードに言いくるめられたまま商会を出た。そして――フンと鼻で嗤う。
(うちの弟を舐めないでもらいたいね)
歩き出しながら浮かべる人の悪い笑みは、さきほどまでと違う。マティアスだって、手の内は隠しているのだ。
実をいえばレオはこれまで、騎士団で訓練するばかりではなかった。王国軍の将軍に教えを乞うて戦術と兵站を学び、軍事教練にも参加してきている。それは華々しく経歴を積むためにやったのではなく個人的な興味だ。おかげでレオの能力はビルウェンに把握されていないらしい。
(相手が着実な男ならば……)
やりようはいろいろある。
ギードの思うような展開にはさせるものか。そんな業腹なこと、マティアス・ド・ラヴォーの名にかけて許しはしない。
「割譲後に伯の虚偽報告が問題となり、彼は失脚するというわけで」
「味方にはめられるとは哀れな男だ。貴国の中のことに口を挟む気はないが」
マティアスは微妙に気まずそうにした。そんなところも好人物っぽく、ギードは自分の目の確かさに自信を持つ。あまり有能すぎる人間が隣国を率いるのは困るのだ。リュシアンのような無能は論外だが。
「では、こちらも裏で出陣の肚づもりはしておく」
「マルロワはどなたが率いるので?」
ギードは探る目になった――レオではないかと目星はついているが、確認だ。
「……あそこの領主は、私の弟でな。あいつを行かせるのが自然なのだが。まだ土地も兵も把握していないし心配ではあるんだ」
「いえいえ、性急に戦端を開かぬよう指示いたしますよ」
レオが騎士として人望があるのをギードも知っていた。だが公爵家の次男坊で育ちが良く、おそらく実戦経験もほぼないはず。ズルズルと睨み合いをしてくれるのではないだろうか。
「わかった。私からも弟には無理をしないよう言っておこう」
マティアスはうなずき、ギードに言いくるめられたまま商会を出た。そして――フンと鼻で嗤う。
(うちの弟を舐めないでもらいたいね)
歩き出しながら浮かべる人の悪い笑みは、さきほどまでと違う。マティアスだって、手の内は隠しているのだ。
実をいえばレオはこれまで、騎士団で訓練するばかりではなかった。王国軍の将軍に教えを乞うて戦術と兵站を学び、軍事教練にも参加してきている。それは華々しく経歴を積むためにやったのではなく個人的な興味だ。おかげでレオの能力はビルウェンに把握されていないらしい。
(相手が着実な男ならば……)
やりようはいろいろある。
ギードの思うような展開にはさせるものか。そんな業腹なこと、マティアス・ド・ラヴォーの名にかけて許しはしない。