私を拾ってくれますか?
自分の手を見て、もうそんなことも気軽に出来なくなったんだなと思う。前を歩く奈垣くんはそんな私の暗い気持ちを知らず、目的地へ浮き足立って一直線。
電車に乗るのか駅の周辺に何かあるのか。奈垣くんの考えを必死に理解しようとしていると、突然足を止めた。
「動くぞ」
「え、ここ…。ジムだよ?」
「体動かそうって言ったじゃん」
目の前にある建物の看板には、〝GYM〟の文字が。これは聞いていない。気晴らしに遊びに誘ってくれたと思っていたから、ここまで本気とは思わなかった。方向転換して帰ろうとするも、奈垣くんに腕をしっかりと捕まえられてしまい、引きずられるように会員の同行者として入ってしまった。
心と体の準備もできていないまま、貸し出しの動きやすい服装を持たされ、更衣室に放り込まれる。…どうしよう。でも奈垣くんが私のために誘ってくれたんだもん。案外やってみたら面白いかも。
「付いてきた私がバカだった…」
始めると、悲鳴しか出てこない。汗は止まらないし、筋肉が痙攣し始めた。
「奈垣くん…。もう、無理」
「今始めたところ!まだまだ動くよ」