私を拾ってくれますか?
口元を隠す飯田と、その後ろで目を見開いて後退りしているあいつ。俺らを見て付き合っていると思うだろうか。諦めてくれるだろうか。
突然距離を詰めた俺に、飯田は当然拒否を示す。失恋した時の飯田の光のない目は見ていられなかった。あいつが近づくことで、また同じ目を見たくない。でも俺がしたことで、飯田を困らせるつもりもない。そんな葛藤の末、掌の直前まで来て止まり触れもせずに離れた。
「んじゃ。また明日」
「うん…」
飯田の顔を見れずに、すぐに背を向けた。これ、明日から目も合わせられなくなるやつだ。自分のしたことに目を背けながらも、これであいつが嫉妬して飯田を振ったことを後悔してくれたらなんて、期待もしている。
「俺、案外意地悪だな…」
奇行に走った俺の中の別人を、頬を叩いて追い出すと、凍える強い風が顔に一気に吹きつけた。